羊聖杯戦争のリプレイのようななにか④
激動の第3サイクル、開幕
【マスターシーン3】
この世に医学で解明できないものはない。かつての私はそう信じていた。あの少女と出会うまでは―
あの夜のことは今でも憶えている。忘れろという方が難しい話かもしれない。いつものように私は夜勤で病院に勤めており、いつものようにたくさんの急患が運ばれてきた。
だが、その日は運命の日だったのかもしれない。深夜遅くに4人の患者が運ばれてきた。車での交通事故だという。そのうちの一人―四人家族の長男―は手足の骨折だけで済んだようだが、他の三人は意識不明の重体だった。助かるかどうかは、50-50(フィフティー・フィフティー)といったところか。父親と母親は他の医師に任せ、私は即座に娘のオペを開始した。後部座席に座っていた彼女の外傷は息子同様酷いものではなかったが、事故の際に頭をかなり強く打ったようで、脳内出血が起こっていた。しかしこの程度のオペ、私には造作のないことだ。普段通り進めれば6時間程度で済む。そして見込み通り、手術は滞りなく進み、5時間30分で終わった。
一日が経った。医師の長時間に及ぶ手術の甲斐なく、両親は息を引き取った。息子には、しばらく伝えないとのことだ。私の手術はうまくいったはずだが、娘はまだ目を覚まさない。
手術後二日、娘は未だ眠ったままである。息子は両親の死を伝えられていないが、我々がなにか隠していることに気づき始めたのか、少し焦りが表に出てきたと他の医師が言っていた。
手術後三日。娘はまだ起きる気配がない。息子は現実を少しずつ認識し始め、顔色が悪くなってきた。その夜、私は夜勤だった。家族の様子が気になるようで、息子も病院で寝泊まりしているようだった。
皆が寝静まったころ、突然廊下で声が聞こえた。私はあわてて飛び出すと、その声の主はあの少年だった。少年は廊下を一目散にかけていった。気になる私は彼の後をついていくと、そこには眠っているはずの少女の姿があった。彼女に抱き着こうとする少年の姿は空をとらえ、そのまま通過していった。私はその光景に目を疑った。夢ではないかと何度も確認した。しかし、それは紛れもない現実だったのだ。彼女の足は地につき、我々の目には映るが、しかし触れることはできないのだ。私も近くに行って何度も確認した。姿はあるのに、決して触れることはできなかった。呆然とする私を尻目に、彼女は自分の病室の扉を開け、中に入っていった。
翌日の朝、娘は何事もなかったかのように目を覚ました。
【第三サイクル】
順番は、⓵ボギー、②まりーちゃん、③ふらんさん、④hideっこんさん、⑤熊さん
⓵アーチャー陣営
商店街で聞き込み調査を行っている(という体の)セイバー・ランサー陣営に接触。
その際、即席でGMが八百屋という舞台設定を行った(これが以降もネタにされることになろうとは…)
アーチャーが八百屋で2組に接触した後、廃工場に移動、アーチャー側から知っている情報を提示する。
提示した情報は【黒霧長人の秘密】、【黒霧弥生の秘密】、【ワンス・ハーウェイの居所】の3点。
【黒霧長人の秘密】
弥生の兄。
没落しつつある魔術家系、黒霧家の長男として生まれる。
既に両親とは死別している。
ワンス・ハーウェイに囚われた弥生を取り戻すために奔走する。好青年なのだが、妹のことになるとキャラが変わったかのように盲目的になるのが玉に瑕。
聖杯への望みはない。強いて言うならば弥生の幸せこそが彼の望みである。
長人の秘密を入手した者は【黒霧弥生の秘密】を入手することができる。
【黒霧弥生の秘密】
長人の妹。
無口な性格で、基本的に兄以外の人間とは話さない。
第三魔法・魂の物質化の体現者。今回の聖杯戦争における器である。
とある事故によって重傷を負い、その際に第三魔法を発現する。以降、自由に発動できるようになった。
しかし、彼女の幽体離脱は霊体が実際に量子を持つため、人間にも視認することができる。
このことが主治医であるワンス・ハーウェイに発見され、なんらかの方法で囚われている。
【ワンス・ハーウェイの居所】
大学病院
②ランサー陣営
ワンス・ハーウェイの情報を探るため、大学病院の近くへやってくる一行。
しかし、周辺には魔術師及びサーヴァントの立ち入りができないよう結界が貼られていた。
そこで、アーチャーに結界に穴をあけるよう依頼。
しかし、ここでもヤツはやらかした。
射撃戦の技能に失敗。結界に穴をあけることができなかった。
一同、呆れ気味。
外の様子に見かねたライダーがひょっこりと外に出てくる。
情報の提示を求めるも、交渉決裂。戦闘に入る。
次ラウンドでは最終決戦も待ち受けている予定だったため、GM困る。
あまりライダーの体力を削るわけにもいかないので、数ターンだけ戦闘を行うことにした。
だが、あの弓兵はここでもやらかした。
ライダーの攻撃がヒットし、アーチャー撤退(チーン)
アーチャーはPLからの信用を完全に失った。(以降、そのポンコツっぷりから八百屋―チャーと呼ばれるようになる)
アーチャーの撤退後、アサシンの宝具により周囲が暗闇に包まれ、ライダーは戦闘から離脱。ランサーたちはもといた場所に戻されてしまう。
③バーサーカー陣営
先ほどの戦闘からほどなくして、機をうかがっていたバーサーカーのマスターは、ライダーに戦闘を申し込む。
申し出を受け入れるライダー。
GMもタイマンなら大丈夫だろうと高をくくっていた。
そう、すべては誤算だったのである。
クリティカルの効果で1D6のダメージを与えられるのだが、ここで最高値の6を出す。たまらず、ライダーはダウン。
なぁにこれぇ。
最悪負けてもいいとは思ってたが、まさかワンパンKOされるとは思ってなかった。
勝利したライダーは【ワンス・ハーウェイの秘密】と(サービスで)ライダーの真名を入手。
【ワンス・ハーウェイの秘密】
天才医学者。ライダーのマスターであり、今回の聖杯戦争の発案者でもある。
黒霧弥生を患者に持つ。
性格は冷静沈着。そして目的のためなら手段を択ばない。
魔術師ではなく、魔術の素養はないのだが、黒霧弥生との邂逅により魔術などのオカルトに興味を持つ。もちろん、理論を知ったところで素養がないので魔術を使うことはできない。
ただし、医学者なので、薬品などを用いたサポートを行う。
実はユリア・オルテンシアと協力関係にある。
聖杯への望みは根源への到達。
④セイバー陣営
大学病院近くの建物の屋上から様子をうかがっていたセイバー陣営一行は、ライダーとの戦いに勝利したバーサーカーを捕捉する。
とっつかまえようとするセイバー(中立・中立)とどうしても戦いたくないバーサーカー陣営。
ダイスで勝負を決めることに。
バーサーカーが撤退の特技判定に成功、対するセイバーは用兵術でダイスを振るが失敗。みすみすバーサーカーを逃がすこととなった。
⑤キャスター陣営
水晶で周辺の様子をうかがっていたキャスターは、バーサーカー陣営が撤退してきたこと、セイバー・ランサー・アーチャー陣営がそれを追跡していることを知る。
バーサーカーが須和山に逃げ帰ってくると、セイバーたちに居場所がバレるどころか、衝突は避けられないだろう。
陣地作成をしているとはいえ、さすがに数的不利を感じたキャスターのマスターは、ランサーに対し、伝書バトを飛ばして停戦協定の申し出を行う。
第三ラウンド終了です。
予定ではこのままクライマックスシーンに突入するはずだったのですが、話の区切りが悪いことと、セイバー・ランサーがライダーの情報を持っておらず、このままクライマックスに入るのは困るとの申し出があった(要するに駄々をこねた)ので、もう1サイクルはさむことになりました。
これぞ、想定外の真骨頂。
次回に続きます。