羊聖杯戦争のリプレイのようななにか⑥

クライマックスシーンです。

今回、調子に乗ってかなり脚色を強くしました。(実際のロールプレイとは異なる表現、誇張があるのでご注意ください。)

果たして聖杯は誰の手に。

 

【マスターシーン5】

俺たち兄弟はいつでも一緒だった。

父親は違ったけれど、俺たちは本当の兄弟のような絆で結ばれていた。

兄さんは俺を一番の剣闘士として認めてくれていたし、

俺も兄さん以上の馬術の名手を知らない。

お互いに信じあった俺らに敵うものは一人もいないと思ってた。

でも、あの時は違った。

完全に奇襲だったんだ。

兄さんと俺は不意をつかれて弓に体を貫かれた。

俺は雷神の血を引いていたから不死身だったが、兄さんは普通の人間だ。

俺は大切な人をこんなにも簡単に失った。

その後、俺は父親に兄さんを、カストールを生き返らえらせるよう何度も懇願した。

でも、その願いは受け入れられなかった。

俺は不死性を対価にして、死してなお、兄さんと共にあるために星になった。

 

それからずっと後のことだ。

俺は誰かが呼ぶ声を聞いた気がした。

気づくと、俺は薄汚れた洋館の一室に立っていた。

目の前にはボロボロになった青年の姿。

「妹を、弥生を、救ってやってくれ…」

まっすぐな目をした青年はそう言うと床に倒れこんでしまった。

俺は、この人間のために命を燃やすことを決意した。

こいつには俺みたいな思いをしてほしくない。

大切な人を、兄を失った俺ならこいつの気持ちが痛いほどわかる。

我が名ポルックスの名に懸けて、マスター黒霧長人の妹弥生を救い出して見せよう。

 

 

【クライマックスシーン】

各PLは回想を行い、真名を明らかにすることで自己強化を行うことができる。

セイバー・ランサー・バーサーカー陣営はそれぞれ回想を行いました。

キャスター?奴は死んだよ。

 

アーチャー・ランサー・バーサーカー陣営はライダーのいる大学病院へ。

セイバーはユリア・オルテンシアの謎を探るため、再度修道院のあった場所へ向かう。

セイバーは技能判定に成功し、魔力の残滓が大学病院へと続いていることに気づく。

そこで彼らもまた、少し遅れて大学病院へと向かうのだった。

 

大学病院へと到着する一行。

アーチャーは射撃術で結界を破ろうと試みる。

今度こそ、成功。(GMひと安心)

結界に人一人分通れるくらいの穴が開き、そこから侵入することに。

 

 

 

中ではライダーとそのマスター、ワンス・ハーウェイが待ち構えていた。

「君も聖杯戦争に参加していたとはね、長人君。」

白衣の医師は長人に向かって言葉を発した。

「当然だ。妹の命がかかってるんだからな。お前の計画を見過ごすわけにはいかねぇ。」

少年はそう答える。

「ところで―」

ランサーが話に割り込む。

「ライダーのマスター、あなたの狙いはなんなのです?」

「私の目的?隠す必要はないか。根源への到達だよ。」

ランサーは質問を続ける。

「魔術師ではないあなたがなぜ根源など目指すのです?」

男は答える。

「確かに、私は魔術師ではない。魔術の素養も、ない。だが、未知への探求という意味では科学も魔術も同じ方向性だと思うのだがね。私は医学以外にも多くの学問を修めてきた。多くのことを知った。しかし、どれも私を満足させるものではなかった。そんな時だよ、彼女に出会ったのは。彼女は私に未知の可能性を示してくれた。魔法という、心躍るような可能性の塊を。私は以来、オカルト関連の書物を読み漁った。そこで知ったのだ。聖杯戦争という東洋で行われた儀式のことを。」

ランサーは再び問う。

「では、黒霧弥生さんを生かすつもりはないということですね?」

「ああ、その通りだ。君たちとはいずれ対立することはわかっていた。そろそろ、この聖杯戦争も終わりにしよう!」

 

 

―――――戦場を駆け回る騎兵は敵からの攻撃を身を翻し躱す。

消耗の色は次第に色濃くなっていく。

一流のサーヴァントとはいえ、魔術士ではないマスターでは多勢に無勢。

いずれ敗北することは目に見えている。

せめて、一騎だけでも!

死力を振り絞った騎兵は猛突進をくりだす。

しかし、その攻撃が敵に届くことはなかった。

英雄の放った斬撃が、騎兵の体に突き刺さる。

勝負あり。

 

 

ライダーは消滅した。止めを刺したのは、アーチャーだった。

残されたマスターは観念したようだ。静かに、目を瞑っている。

「では、弥生さんの居場所をおしえてもらいましょうか。」

ランサーが問う。

「ああ。彼女なら研究棟の一番奥の部屋にいる。だが、彼女はこの結界から出ることはできない。」

「ええ、その通り。彼女はこのアサシンの作り出す結界から逃れることはできないわ。」

どこかから、声が聞こえた。

その声の主は、自分から姿を現した。

ランサーはその女に見覚えがあるようだ。

「ユリア・オルテンシア、やはりあなたでしたか。」

「その名前は本名じゃないの。実をいうと、聖堂協会から派遣された監督者でもないわ。本当の名前は市城百合亜。魔術士よ。」

「わざわざご丁寧に自己紹介をありがとうございます。ところで、あなたはなぜこのような回りくどい真似を?聖杯に何を望むのです?」

女は答える。

「そうね、偽の聖杯を与えて争わせたのは少しでも勝率を上げるため。聖杯に望むことは人類滅亡の回避よ。」

「人類が滅亡?何を根拠に?」

「私にはね、未来視の能力が備わっているの。でも完全なものじゃなくて、突発的に表れる。昔ね、私は人類が滅亡する未来を視たの。あんな未来、認められないわ。だから聖杯を使ってその未来を回避するの。」

ランサーの目が少しだけ細くなる。

「私に隠し事は通用しません。あなた、まだ何か言っていないことがありますね?」

すると、百合亜は狂ったように笑い出した。

「プププ、クフフアーッハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!そうよ!その通り!よく見破ったわねランサーのサーヴァント!私の目的は人類の滅亡を回避すること、そこは間違ってないわ。でもね、フヒッ、なんで私がそんなことするかわかる?それはね、神になるためなの。人類を救った救世主として!人々を支配する存在として!人間を虐げる神として!君臨するためなのよ!」

魔剣士が一歩前に出る。

「ランサーよ。この者に話し合いなど通じぬ。我もかつて悪道に落ちた身成れど、人の美しさに気づいた。人は救うべき存在だが、虐げる存在ではない。だからこそ、この者の思想を許すことはできぬ。」

長人はこうつぶやく。

「弥生をお前の望みのための道具になんか、させるものか。」

硲巽はバーサーカーの方へと目をやる。

バーサーカーは決意のこもった面持ちのまま、こくりとうなずいた。

ジェン・ツィーは黙ったままランサーの前に立つ。

「わかりました、ちぃちゃん。あなたは必ず私が守ります。皆さん、準備はよろしいですね?」

最後の戦いが始まった。

 

 

魔剣士が先陣を切る。

彼の魔術攻撃によって、アサシンは回復手段を封じられた。

アーチャーは射程外から援護を行う。

続いて狂戦士の渾身の一撃がアサシンの肉体を貫く。

しかし、結界は消滅しない。

宝具、『我が魂は神の御業なり』発動!

アサシンは死してなお再び生き続ける。

英雄たちの猛攻を何度も受け、そのたびに蘇生する。

アサシンの刃に塗られた毒に蝕まれ、英雄たちは少しづつ体力を消耗していく。

かのように思われた。

「残念、宝具はすでに発動済みです!」

棋士はそう言い放った。

聡明な棋士はすでに相手の策を読み、事前に手を打っていたのだ。

ランサーの宝具『右上スミ・小目』により、アサシンの復活は阻止された。

次第に薄くなっていく結界。

アサシンの肉体はすでに消えかかっている。

4騎の勝利である。